MISSION法、退役軍人の心血管手術に大きな改善と予期せぬ課題
Impact of the MISSION Act on Quality and Outcomes of Major Cardiovascular Procedures Among Veterans
背景
2019年に施行されたアメリカ退役軍人省(VA)の「MISSION法」は、退役軍人がVA以外の医療施設で治療を受ける機会を拡大したが、医療成果への影響は。
アメリカCorporal Michael J. Crescenz VA Medical CenterのGroeneveldらは、2016年10月〜2022年9月に、VA病院から60分以上離れた場所に住む退役軍人を対象に、PCI(n=43,000)・CABG(n=23,301)・大動脈弁置換術(AVR)(n=14,682)の移動時間がアウトカムに与える影響を評価した。
結論
VA病院から60分以上離れた場所に住む退役軍人の移動時間は平均30分短縮されたが、PCIやCABGを受けたこのグループでは、MACEの発生率が増加していた(各2.3ppt・1.6ppt増)。一方、AVRでは、アウトカムに有意な差はみられなかった。
評価
アクセス改善を目的としたMISSION法が、遠隔地に住む退役軍人の心血管手術後の転帰を悪化させた可能性を示唆したここでの結果は、公衆衛生政策の意図せぬ影響を明らかにし、政策立案者や医療提供者にとって重要な警鐘となる。特に注目すべきは、アクセス利便性(移動時間の短縮)と医療の質(MACEの増加)がトレードオフ関係にあった、という点である。著者らは、VA病院は長年にわたり心臓血管ケアの質を向上させる努力をしてきたが、MISSION法によって非VA施設を選択する患者が増えた結果、それらの質の差が臨床転帰の悪化として現れた、としている。