その死は「予言の自己成就」か? 蘇生後昏睡患者での治療中止判断を検証
Recovery Potential in Patients After Cardiac Arrest Who Die After Limitations or Withdrawal of Life Support
背景
回復の可能性が非常に低いと判断された心停止後昏睡患者では、生命維持療法の差し控え/中止(WLST)が決断されることがある。ただ、治療継続が効なく終わったケースは観測可能であるのに対して、治療中止が決断されたものの、治療を継続していれば救命可能であったケースは反事実的で観測不可能である、という非対称性があるため、WLST判断の是非には不確実性がつきまとう。
アメリカUniversity of Pittsburgh School of MedicineのElmerらは、同大学病院で心停止蘇生後に治療を受けた成人昏睡患者(n=2,391)を対象に、3名以上の心停止後治療の専門家による症例レビューを行い、WLST後に死亡した患者の推定回復可能性を推定した。
結論
29.9%は生存退院した。
WLSTがなされた後、死亡に至った「アウトカム不確実」例は59.8%(1,431名)であった。このうちレビューしたすべての専門家によって、治療が継続されていれば回復する可能性が1%未満と推定されたのは、わずか36.2%(518名)であった。
これに対し、63.8%(913名)では1名以上の専門家が1%以上の回復可能性を見込んでおり、さらに15.9%(227名)ではすべての専門家が1%上の回復可能性を見込んでいた。
評価
疾患の本性上、WLSTがなされなかった場合の結果を知ることができないというこの観測不能な領域にあっては、WLST後の死亡を判断の正しさと同一視する、一種の「自己成就的予言」が成立しやすい。
本研究は、大学病院内でのWLST後の回復可能性を専門家レビューによって検証することで、WLST判断のバイアスの可能性を可視化した。

