小児心臓死ドナー(DCD)心臓の術中蘇生と乳児への移植が成功
On-Table Reanimation of a Pediatric Heart from Donation after Circulatory Death
背景
小児の末期心不全や修復不能な先天性心疾患には心臓移植が正当化されるが、ドナー臓器の不足が待機期間の長期化と死亡に繋がっている。心臓死ドナー(DCD)と常温体外循環(NRP)の併用はドナープールを最大30%増加させる可能性を持つが、倫理的懸念によりアメリカおよび同国外での普及は制限されてきた。特に小児のDCD心臓は小型であるため、実現に多大な障害があった。
アメリカDuke UniversityのTurekらは、小児DCD心臓の術中蘇生を行い、3ヵ月齢のレシピエントへ移植した事例を報告した。
結論
研究チームは、ポンプ・バッグ・酸素化装置からなる装置を組み合わせ、ドナーからの摘出後も心臓への血流維持を可能にした。この術中蘇生は、生命維持治療中止後、循環死判定から厳格な待機期間を経て心臓を摘出し、直ちに体外回路に接続して実施された。心臓は灌流開始後すぐに洞調律で拍動を開始し、良好な冠動脈灌流と正常な心室機能が確認された。その後心臓は、生後3ヵ月の乳児に無事に移植された。術後経過は順調であり、術後3ヵ月時点でも重篤合併症や拒絶反応の兆候は認められていない。
評価
倫理的懸念からNRPが実施できない施設において行われた、DCD小児心の利用を可能にする画期的な術中蘇生法の第一例報告である。NRPが持つ利点(心蘇生と機能のリアルタイム直接評価)を、倫理的問題を回避しつつ実現する潜在力がある。特に、小児心のサイズによる制約を克服した点が重要で、現在DCD心移植の対象とならない多くの小児患者への臓器提供を可能にする。ただし、臨床試験による検証は、DCD心移植自体の希少性から困難を伴う。また、成人DCDドナーへの応用可能性は重要な研究課題である。なお、NEJMは3名を対象に、DCD心を超酸素化保存液で洗浄し、長期機械循環で潅流「蘇生」する新手法「REUP(rapid recovery with extended ultraoxygenated preservation)」の成功報告を併載している。(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2500456)


