アメリカで脂質低下薬はどう処方されているか
Utilization and spending on lipid lowering therapies in Medicaid from 2018 to 2022
背景
米国では7,000万人以上の低所得者がメディケイドに加入しており、心血管疾患の負担が大きい。
アメリカBeth Israel Deaconess Medical CenterのOseranは、2018〜2022年のメディケイドによる全国レベルの脂質低下薬(スタチン・PCSK9阻害薬等)の支出・利用データを分析し、各年の総請求額と総支出額を評価した。
結論
1億1,500万件以上の処方箋を分析した。期間中の脂質低下薬の年間処方件数は1.2%増の2,290万件、支出は13.2%増の3億9,440万ドルであった。スタチン使用は期間中安定し、支出は減少したが、PCSK9阻害薬・イコサペント酸エチル・ベンペド酸は、処方件数・支出ともに大幅に増加した。特にPCSK9阻害剤は処方件数が約16倍の121,737件、支出が約7倍の6,570万ドルと急増した。
評価
メディケイド支出は、低所得者の状況を反映するため一般化は困難だが、他報告と総合すると、近年脂質低下薬では、利用率の比較的低い新規薬・高価薬への支出が、全体の増加を大きく押し上げた、という結論である。さらに、循環器専門医を中心とする高ボリューム医たちが集中して高コスト薬を処方している、という「逆最適」状況が、この原因であると示唆していることが重要である。