病院全体で使用する晶質液輸液、乳酸リンゲル液と生食で差なし:FLUID試験
A Crossover Trial of Hospital-Wide Lactated Ringer's Solution versus Normal Saline
背景
輸液に用いる晶質液は、生理食塩液で良いのか、乳酸リンゲル液やPlasma-Lyteなどのバランス晶質液が優るのか。このテーマをめぐっては、救急や集中治療室セッティングですでに複数のランダム化試験が行われてきたが、病院全体ではどうか?
カナダOttawa Hospital Research InstituteのMcIntyreら(FLUID)は、オンタリオ州の医療施設をクラスターランダム化し、12週間のクロスオーバー(ウォッシュアウト期間あり)で、病院全体で使用される晶質液として乳酸リンゲル液と生理食塩水を比較する医師主導型実用的RCTを実施した。
結論
16の医療施設で、約144,000件の入院患者が含まれると推定されていたものの、COVID-19パンデミック により試験は中途終了し、各群のクロスオーバーが完了した、7施設43,626名の患者が含まれた。
初回入院後90日以内の死亡・再入院率は、乳酸リンゲル液群で20.3%、生理食塩水群21.4%と差がなかった(調整絶対リスク差 −0.53; 相対リスク 0.97)。
すべての副次アウトカムについても同様に差は認められなかった。また、重篤有害事象は報告されなかった。
評価
乳酸リンゲル液と生食で、死亡・再入院の複合アウトカム率に有意な差は認められなかった。
ただし、90日死亡率の点推定は乳酸リンゲル液群でわずかに良い傾向にあり、試験が中断されなければ有意な差を示した可能性もある。