HER2変異肺がんへ経口HER2 TKI、Zongertinibが有望か:LUNG-1試験
Zongertinib in Previously Treated HER2-Mutant Non-Small-Cell Lung Cancer

カテゴリー
がん、Top Journal
ジャーナル名
The New England Journal of Medicine
年月
June 2025
392
開始ページ
2321

背景

HER2(ERBB2)変異は非小細胞肺がん(NSCLC)の2%〜4%に存在する。HER2を標的としたNSCLC治療薬としてはトラスツズマブ デルクステカンが唯一承認を受けている。
アメリカUniversity of Texas M.D. Anderson Cancer CenterのHeymachらは、進行・転移性NSCLC患者を対象としたマルチコホート第1a-1b相試験(LUNG-1)において、不可逆的HER2選択的チロシンキナーゼ阻害薬、zongertinibの客観的奏効率を報告した。
報告は、チロシンキナーゼドメインに変異を有するコホート1の患者、チロシンキナーゼドメイン変異に加えHER2標的抗体薬物複合体による治療歴を有するコホート5の患者、チロシンキナーゼドメイン以外に変異を有するコホート3の患者について行われた。

結論

コホート1で1回120 mgの投与を受けた75名のうち、71%で客観的奏効が認められた。奏効持続期間は中央値14.1ヵ月で、無増悪生存期間は中央値12.4ヵ月であった。グレード3以上の薬剤関連有害事象は17%に認められた。
コホート5では31名のうち、48%で客観的奏効が認められた。グレード3以上の薬剤関連有害事象は3%に認められた。コホート3では20名のうち、30%に客観的奏効が認められた。グレード3以上の薬剤関連有害事象は25%に認められた。この二つのコホートでは奏効持続期間・無増悪生存期間の中央値は確定していなかった。
また、いずれのコホートでも薬剤関連の間質性肺疾患は発生しなかった。

評価

経口投与が可能な新規HER2 TKI、zongertinibは管理可能な毒性で、多くの患者に客観的奏効をもたらした。トラスツズマブ デルクステカンでは問題となる間質性肺炎が1件も発現しなかったことは注目に値する。
現在、この結果を確認すべく第3相Beamion LUNG-2試験が進行中である(NCT06151574)。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(がん)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Journal of Clinical Oncology (JCO)、Journal of the National Cancer Institute(JNCI)、Lancet、The New England Journal of Medicine(NEJM)、Cancer Research (Cancer Res)