重症患者への高タンパク質経腸栄養はやはり無益か:TARGET Protein試験
Augmented Enteral Protein During Critical Illness: The TARGET Protein Randomized Clinical Trial
背景
集中治療室(ICU)の重症患者では急速な筋萎縮・筋力低下が生じ(ICU-acquired weakness; ICU-AW)、入室中・退室後のアウトカムに悪影響を与える。以前の非ランダム化研究は、ICU患者におけるタンパク質投与の有益性を示唆したものの、高用量のタンパク質投与を検証したEFFORT Protein試験、PRECISe試験はともにアウトカムの改善を示せず、むしろ有害との懸念を残した。
オーストラリアUniversity of AdelaideのSummersら(TARGET Protein)は、オーストラリア・ニュージーランドの8ヵ所のICUをクラスターランダム化し、経腸栄養を必要とする重症患者へタンパク質増量の経腸栄養剤(タンパク質100 g/L)、または通常の経腸栄養剤(63 g/L)の投与を行い、90日退院生存日数を比較するクラスターランダム化クロスオーバー試験を実施した。
結論
3,397名の患者が登録された。
90日間の退院期間(当初の病院外での生存日数)は、タンパク質増量群で中央値62日、対照群で64日と有意な差は認められなかった。
90日生存率はタンパク質増量群で72.6%、対照群で74.0%であった(リスク比 0.99)。その他の副次アウトカムにも有意な差は認められなかった。
評価
この問題に関する3件目の大規模RCTであり、やはりタンパク質増量のベネフィットは認められなかった。
重症患者に高用量のタンパク質を投与しても筋タンパク質合成には繋がらず、かえって代謝負荷を増大させる可能性が高いと考えられる。