心臓手術でANH(希釈式自己血輸血法)を使うべきか
A Randomized Trial of Acute Normovolemic Hemodilution in Cardiac Surgery
背景
心臓手術へのAcute Normovolemic Hemodilution(ANH:希釈式自己血輸血法[体外循環開始前に自己血を採取し、後に再輸血する血液保全法])利用が提唱されている。
アメリカUniversity of OklahomaのLandoniらは、世界11ヵ国において人工心肺を用いた心臓手術を受ける成人患者2,010名をANH群と通常治療群に無作為に割り付ける単盲検試験を行った。
一次アウトカムは、入院中における同種赤血球輸血(ABT)1単位以上であった。
結論
一次アウトカムに有意差はなかった[ANH群27.3% vs. 通常治療群29.2%]。術後出血による手術はANH群で3.8%、通常ケア群で2.6%に実施され、30日以内または入院中の死亡率はそれぞれ1.4%、1.6%であった。安全性結果は両群同等であった。
評価
同テーマでは最近まで「有効」RCT結果が出されているが(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36848777/)、すべて規模が小さく、本RCT結果はほぼ「最終」とみなされる。本試験により、心臓手術におけるANHは、特殊な宗教的輸血拒否のような場合での安全なオプションとしてしか残らないことになる。ただし著者らは、血液製剤のコストが高い米国においては、ANHが血液保全戦略の一部を担いうるとし、国民の輸血の必要性を減らしたことを示すレビューを発表する予定である、という。