一過性脳虚血発作(TIA)の症状は一過的でも認知機能の低下リスクは残る
Cognitive Decline After First-Time Transient Ischemic Attack
背景
一過性脳虚血発作(TIA)は、急性梗塞の所見がないにもかかわらず、生じる一過性の神経機能障害エピソードである。一般に脳卒中は認知機能低下や認知症のリスクを高めるが、TIAと認知機能低下の関連は十分認識されていない。
アメリカUniversity of Alabama at BirminghamのDel Beneらは、黒人・白人の参加者(n=30,239)を脳血管イベントの発症について追跡調査した集団ベース縦断コホート研究、Reasons for Geographic and Racial Differences in Stroke(REGARDS)の二次データ解析を行い、初回TIA(拡散強調画像で陰性)・脳卒中の前後での認知機能の軌跡(trajectory)を比較した。
結論
TIA患者356名、脳卒中患者965名が含まれ、無症候の対照群14,882名と比較された。
脳卒中患者では、初回イベント前の時点で、複合認知機能アウトカムの標準化ZスコアがTIA患者・対照よりも低かった。脳卒中患者のスコアは初回イベント後に、TIA患者・対照と比較して有意に低下した。
また、初回イベント後の認知機能の低下はTIA患者でも認められ(年−0.05)、これは無症候の対照(-0.02)より急速であり、脳卒中患者(-0.04)と差がなかった。
評価
先行研究が示唆した通り、TIAはその後の認知機能低下を独立に予測するリスク因子であった。
この研究から両者の因果関係について推定することはできないものの、TIA患者での認知機能スクリーニングとフォローアップの重要性を示すデータである。