世界の55〜64歳のCVD死亡の13.5%がDEHP曝露と関連する
Phthalate exposure from plastics and cardiovascular disease: global estimates of attributable mortality and years life lost
背景
主にプラスチック可塑剤として使用されているフタル酸エステル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)(DEHP)が心血管疾患(CVD)の一因である可能性が示唆されている。
アメリカNew York UniversityのTrasandeらは、Institute for Health Metrics and Evaluation(IHME)のCVD死亡データと地域別DEHP曝露量推定値を用いて、世界のDEHP曝露による健康被害を推計した。CVD死亡のハザード比を、曝露量推定値から算出し、各国CVD死亡率を用いてDEHP曝露による超過死亡数と損失生存年数(YLL)を算出した。
結論
2018年、DEHP曝露によるCVD死亡は世界で推定356,238人(55〜64歳CVD死亡全体の13.5%)に上り、その98%がプラスチック使用に起因した。地域差が顕著で、南アジアと中東でDEHP起因CVD死亡割合が最も高かった(16.8%)。これら地域と東アジア、太平洋地域が、世界のDEHP起因CVD死亡の73.2%を占めた。DEHP起因のYLLは、全世界で1,047万3千件に達した。
評価
問題となっている主題に関する、現在まで最大の疫学研究である。全世界の55〜64歳CVD死亡全体の13.5%がDEHP曝露と関連する、というのは衝撃的な結論だが、これは疾病負担モデルによる評価であり、直接的な因果関係ではない。他方、著者らは米国で、55〜64歳の成人5,000人以上の尿中フタル酸エステル濃度を測定し、10年間にわたりそのレベルと早期死亡リスクを比較しており、より直接的な因果関係を示唆するデータも出している(https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0269749121016031)。
著者らはまた、DEHP曝露関連死亡による経済ロスは最大3兆7,400億ドルにまで達する可能性があるともしており、交渉中の国際プラスチック条約(The Global Plastics Treaty)にインパクトを与える。