ICU鎮静でデクスメデトミジンはプロポフォールに優らず:A2B試験
Dexmedetomidine- or Clonidine-Based Sedation Compared With Propofol in Critically Ill Patients: The A2B Randomized Clinical Trial

カテゴリー
救急医療、Top Journal
ジャーナル名
The Journal of the American Medical Association
年月
May 2025
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開始ページ
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背景

デクスメデトミジンは、集中治療室における鎮静薬のオルタナティブとして期待され、ランダム化比較試験での検証が進められてきたが、通常ケアとの明確な差は示されていない。
スコットランドUsher InstituteのWalshら(A2B)は、イギリスの集中治療室41ヵ所で、48時間以上の人工呼吸器管理が予想され、プロポフォールとオピオイドを併用した鎮静・鎮痛を受けている成人患者を、デクスメデトミジン、クロニジン、プロポフォールによる浅鎮静(RASSが-2から1)へと割り付け、抜管成功までの時間を比較するRCTを実施した(n=1,404)。

結論

ランダム化から抜管成功までの時間(中央値)は、デクスメデトミジン群で136時間、クロニジン群で146時間、プロポフォール群で162時間であった。部分分布ハザード比は、デクスメデトミジンとプロポフォールの比較で1.09、クロニジンとプロポフォールの比較では1.05であり、いずれも有意な差はなかった。
事前に指定されたサブグループ解析では、患者背景による交互作用は認められなかった。二次アウトカムのうち、興奮の発生率はデクスメデトミジン群(プロポフォール群とのリスク比 1.54)とクロニジン群(1.55)で高かった。また、徐脈(50回/分未満)の発生もデクスメデトミジン群(1.62)とクロニジン群(1.58)で高かった。
180日死亡率は、デクスメデトミジン群(ハザード比 0.98)、クロニジン群(1.04)ともプロポフォール群と差がなかった。

評価

ふたつのα2アドレナリン受容体作動薬、デクスメデトミジンとクロニジンのいずれもプロポフォールとの差を示すには至らなかった。
すべてのICU患者に適した鎮静薬は存在しないと考えられ、また同時に発表された本試験の費用対効果分析にも差はないことから(https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2025.17533)、状況と目的に応じて選択することが許されよう。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(救急医療)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Critical Care Medicine (Crit Care Med)、The New England Journal of Medicine (NEJM)