小児での身体的虐待を示唆する臨床・画像的所見は?
Has This Child Experienced Physical Abuse?: The Rational Clinical Examination Systematic Review
背景
児童虐待死の多くでは、死亡に至る受傷以前に救急外来を受診していたとするデータがある。虐待死を防ぐためには、小児外傷の所見から身体的虐待が疑われるケースを適切に特定し、受診を介入の契機とすることが重要となる。
アメリカBoston Children's HospitalのShahらは、1970年から2024年9月までに出版された、臨床所見・放射線学的特徴と身体的虐待の有無を評価した研究を特定し、各所見の身体的虐待についての感度・特異度・尤度比を算出した。
結論
18件の研究が包含基準を満たした。身体的虐待の有病率は5%から79%の範囲であった。
皮膚所見にフォーカスした研究では、口腔小帯断裂などの口腔損傷(陽性尤度比6.6)、臀部の皮下出血(陽性尤度比の範囲 15-83)、首の皮下出血(2.2-84)、パターン的皮下出血(2.0-66)、結膜下出血(5.4-130)が身体的虐待の確率上昇と関連した。
頭部外傷により入院した小児での研究からは、網膜出血(陽性尤度比 11.0)、けいれん(3.9)、低酸素性虚血性損傷(3.4)、硬膜下血腫(3.2)が身体的虐待の可能性と関連した。
骨撮影を受けた小児を対象とした研究では、単独骨折(5.9)および多発骨折(3.8)が身体的虐待の可能性と関連した。
評価
身体検査での口腔損傷、皮下出血、結膜下出血や、神経画像・眼科的検査の所見などが身体的虐待と関連した。
こうした所見に遭遇した際には、身体的虐待の可能性を念頭におき、慎重な評価と対応が求められる。