カリフォルニアの山火事は精神疾患による救急受診を増加させた
Fine Particulate Matter From 2020 California Wildfires and Mental Health-Related Emergency Department Visits

カテゴリー
救急医療
ジャーナル名
JAMA Network Open
年月
April 2025
8
開始ページ
e253326

背景

アメリカでは気候変動の影響からか、大規模な林野火災の発生が増加している。特に2020年のカリフォルニア州は1年間で170万ヘクタール(岩手県の面積を上回る)が焼失するという記録的な年となったが、山火事に由来する微小粒子状物質(PM2.5)への大規模かつ長期的な曝露は、人々の精神衛生にどのような影響を与えるのか。
アメリカStanford UniversityのJungらは、カリフォルニア州のHealth Care Access and Informationより得た2020年7月から12月の救急外来受診データと、住所郵便番号に基づき推定された山火事由来のPM2.5曝露量から、PM2.5曝露と各種精神疾患による救急受診との関連を調査した(n=86,609)。

結論

救急受診時の診断(ICD-10分類)は、精神作用物質使用が27.6%、非気分性精神病性障害が19.3%、不安障害が30.8%、うつ病が12.0%、その他の気分感情障害が6.2%であった。
山火事のピークの月には、山火事由来PM2.5の日中濃度(中央値)は11.9 μg/m3まで上昇した。山火事由来PM2.5の増加は、すべての精神疾患による救急受診増加と関連し(10-μg/m3あたり相対リスク1.08)、うつ病(1.15)、その他の気分感情障害(1.29)、不安障害(1.05)とも関連した。
サブグループ解析では、女性と若年者においてこの増加傾向が顕著であることが示唆され、また黒人では気分感情障害、ヒスパニック系ではうつ病による受診増加にも影響した。

評価

山火事が引き起こしたPM2.5への曝露は、各種の精神疾患による救急受診増加と関連した。
日本では現在までのところ、山火事の発生件数が増加しているという統計的事実はないものの、山火事が呼吸器・循環器疾患以外にも影響を与えるという示唆は、気候変動の負のインパクトを理解する上で重要である。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(救急医療)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Critical Care Medicine (Crit Care Med)、The New England Journal of Medicine (NEJM)