電子の鼻で肺がんの「におい」を嗅ぎわける
Lung cancer detection by electronic nose analysis of exhaled breath: a multi-center prospective external validation study
背景
人工電子鼻(electronic nose; eNose)は気体中の化学物質を検出し、そのパターンを認識する技術であり、特にヒトの代謝プロセスと病態生理学を反映する呼気中の揮発性有機化合物(VOC)を分析することで、疾患を識別することが期待されている。
オランダRadboud University Medical CenterのBumaらによる前向外部検証研究は、同国2ヵ所の胸部腫瘍外来から肺がん疑いの患者を募集し、クラウド接続型eNose(SpiroNose(R))によって収集された呼気プロフィルに対する既存のeNoseモデル、および外来患者用に調整された新規eNoseモデルの診断パフォーマンスを評価した(n=364)。
結論
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者を対象としたオリジナルeNoseモデルは、COPD患者集団(n=116, 84%が肺がん)において受信者動作特性曲線下面積0.92、参加者全体(59%が肺がん)では0.80で肺がんを検出した。感度95%における特異度・陽性適中率・陰性適中率は、COPD患者で各72%・95%・72%、参加者全体で51%・74%・88%であった。
新たなeNoseモデルは、検証コホート(n=121, 60%が肺がん)において、受信者動作特性曲線下面積0.83の精度で肺がんを検出し、感度94%、特異度63%、陽性適中率79%、陰性適中率89%であった。
評価
呼気のeNose分析は、高い感度で肺がんを特定した。
臨床・画像的に肺がんが疑われる参加者を対象とした検証であり、一般集団での検診などにそのまま適用可能な結果ではないが、非侵襲的なポイント・オブ・ケア検査として、診断プロセスを補完するポテンシャルは高い。