ポジティブかネガティブか、スタチンの認知機能への影響
Effects of Statins on Memory, Cognition, and Brain Volume in the Elderly
背景
スタチンには認知機能に対するネガティブな効果もポジティブな効果も示唆されている。オーストラリアSt. Vincent’s HospitalのSamarasら(the MAS[Sydney Memory and Ageing Study])は、同長期研究に参加する高齢者1,037名を対象として、スタチンと記憶・認知機能との関係を6年間、脳容量との関係を2年間前向観察研究した。
結論
6年間の追跡でスタチンと認知機能低下に有意な関連を認めなかった。逆に、観察期間中でのスタチン開始は記憶能力低下発症率の低下を伴った。探査的解析では、心疾患・ApoE ε4キャリアでは、スタチン使用は特定の記憶テストでの成績低下の緩徐化と関連していた。脳容量への影響はなかった。
評価
長くくすぶっている問題で、逆に「認知能への好影響はないのではないか」というレビューも存在している(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4483758/)。オーストラリアのMASは信頼度の高い長期研究だが、ふたたび「好影響の方が多いのではないか」という示唆を支持した。