マラソン中の心停止発生率は変わらないが、生存率は向上している
Cardiac Arrest During Long-Distance Running Races
背景
2010〜2023年のアメリカでフルマラソンおよびハーフマラソンの完走者は2,900万人を超え、2000〜2009年の3倍に上ったが、レース中の心停止発生率とアウトカムの変化は。
アメリカEmory UniversityのKimらは、アマチュアのフルマラソンおよびハーフマラソン完走者29,311,597名を対象としたレース関連の心血管イベントレジストリを分析し、過去の参照基準(2000〜2009年)と比較した。
一次アウトカムは、心停止・死亡の発生率であった。
レース完走者の記録、メディア報道、レースディレクターの報告、米国陸上競技連盟の主張、生存者または近親者へのインタビューからの包括的な症例プロファイルをレビューした。
結論
心停止の発生率は参加者10万名あたり0.60名で、2000〜2009年の発生率(10万名あたり0.54名)と両期間同程度であったが、心臓死の発生率は10万名あたり0.39名から0.20名へと半減した。心停止は両期間同様に、女性(10万名あたり0.19名)より男性(10万名あたり1.12名)が多く、ハーフマラソン(10万名あたり0.47名)よりフルマラソン(10万名あたり1.04名)で多く発生している。
心停止の明確な原因が特定できた52%の参加者において、冠動脈疾患が最も一般的な病因であった。心肺蘇生時間の短縮と初期の心室頻脈性不整脈(initial ventricular tachyarrhythmia rhythm)は生存と関連した。
評価
著者らにより2012年に発表された、マラソンおよびハーフマラソン中の突然心停止に関する初の研究(https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1106468)の続編で、このテーマに関する現在最上の研究である。著者らは、生存者全員がCPRを受けたが、大多数がAEDも利用できたことが生存率の大幅な改善につながったとしている。ここでの生存率は、今日AEDが日常的に使用可能である空港などの公共スペースでの心停止生存率と同等で、これらの場所でも同様に死亡者数が近年減少している。著者らは、レース参加者にCPRトレーニングを受講させ、レースコースに戦略的にAEDを配置することの重要性を強調している。また、大会開催前に、最も脆弱な参加者を適切に特定することも重要であるとしている。