小児の緊急挿管時の無呼吸酸素化は低酸素イベントを減らせるか:Kids THRIVE試験
Effectiveness of nasal high-flow oxygen during apnoea on hypoxaemia and intubation success in paediatric emergency and ICU settings: a randomised, controlled, open-label trial
背景
小児での緊急気管挿管は、初回施行失敗や低酸素血症などのリスクが高い。ネーザルハイフロー(NHF; 高流量経鼻酸素)などを用いた無呼吸状態での酸素化は、こうしたリスクを軽減できる可能性があるが、一般的に採用されてはいない。
オーストラリアUniversity of QueenslandのGeorgeらは、オーストラリア・ニュージーランド・スイスの10施設で、緊急気管挿管を受ける16歳未満の小児患者を、挿管中にNHFを受けるグループまたは標準ケアを受けるグループへと割り付け、SpO2が90%以下となる低酸素イベントの発生率、初回挿管成功率を比較するRCT、Kids THRIVE試験を実施した。
結論
969名の小児患者に対して、1,069回の挿管が実施された。
治療意図(ITT)集団における低酸素イベントの発生率は、NHF群で12.8%、標準ケア群で16.2%と、有意な差は認められなかった(調整オッズ比 0.74)。初回挿管成功率はNHF群63.0%、標準ケア群59.1%とこちらも差がなかった(1.13)。
ただし、試験プロトコル準拠(per-protocol)集団での解析では、低酸素イベントはNHF群の10.8%、標準ケア群で16.7%で発生し、NHFによる低酸素イベントの減少が認められた(0.59)。
評価
小児挿管に関する最大規模のRCTであり、数値的にはNHF群で低酸素イベント率・初回挿管成功率とも良好な傾向がみられたものの、有意差は認められなかった。
ただし、per-protocol解析や一部のサブグループでは低酸素イベントの減少がみられており、無呼吸酸素化にベネフィットが存在する可能性は残されている。