小児の緊急挿管時の無呼吸酸素化は低酸素イベントを減らせるか:Kids THRIVE試験
Effectiveness of nasal high-flow oxygen during apnoea on hypoxaemia and intubation success in paediatric emergency and ICU settings: a randomised, controlled, open-label trial

カテゴリー
救急医療
ジャーナル名
The Lancet Respiratory Medicine
年月
March 2025
Online first
開始ページ
Online first

背景

小児での緊急気管挿管は、初回施行失敗や低酸素血症などのリスクが高い。ネーザルハイフロー(NHF; 高流量経鼻酸素)などを用いた無呼吸状態での酸素化は、こうしたリスクを軽減できる可能性があるが、一般的に採用されてはいない。
オーストラリアUniversity of QueenslandのGeorgeらは、オーストラリア・ニュージーランド・スイスの10施設で、緊急気管挿管を受ける16歳未満の小児患者を、挿管中にNHFを受けるグループまたは標準ケアを受けるグループへと割り付け、SpO2が90%以下となる低酸素イベントの発生率、初回挿管成功率を比較するRCT、Kids THRIVE試験を実施した。

結論

969名の小児患者に対して、1,069回の挿管が実施された。
治療意図(ITT)集団における低酸素イベントの発生率は、NHF群で12.8%、標準ケア群で16.2%と、有意な差は認められなかった(調整オッズ比 0.74)。初回挿管成功率はNHF群63.0%、標準ケア群59.1%とこちらも差がなかった(1.13)。
ただし、試験プロトコル準拠(per-protocol)集団での解析では、低酸素イベントはNHF群の10.8%、標準ケア群で16.7%で発生し、NHFによる低酸素イベントの減少が認められた(0.59)。

評価

小児挿管に関する最大規模のRCTであり、数値的にはNHF群で低酸素イベント率・初回挿管成功率とも良好な傾向がみられたものの、有意差は認められなかった。
ただし、per-protocol解析や一部のサブグループでは低酸素イベントの減少がみられており、無呼吸酸素化にベネフィットが存在する可能性は残されている。

関連するメディカルオンライン文献

大規模臨床試験、新規の薬・機器・手法・因子・メカニズムの発見に関する文献を主に取り上げ、原文の要約と専属医師のコメントを掲載。

(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(救急医療)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Critical Care Medicine (Crit Care Med)、The New England Journal of Medicine (NEJM)