敗血症性ショックでのノルアドレナリン後のバソプレシンの至適なタイミングは?
Optimal Vasopressin Initiation in Septic Shock: The OVISS Reinforcement Learning Study
背景
敗血症性ショック患者に対する昇圧剤の第一選択はノルアドレナリンであるが、ノルアドレナリンの投与後にも血圧が維持されない場合、どのタイミングでバソプレシンを投与するべきかに関しては十分なデータがない。
フランスUniversite Paris CiteのKalimouttouらは、カリフォルニア州の5施設でSepsis-3の敗血症性ショック基準を満たした患者(n=3,608)の電子健康記録データを用い、強化学習によってバソプレシンの開始タイミングを最適化するルールを導出した。
さらにカリフォルニア(n=628)、および全米の3つの外部データセット(n=10,217)でこのルールを検証した。
結論
強化学習モデルは、検証データにおいて臨床医が実際に行ったバソプレシン投与と比較して、より多くの患者に(87% vs. 31%)、ショック発症からより早いタイミングで(中央値4時間 vs. 5時間)、より少ないノルアドレナリン用量で(中央値0.20 μg/kg/min vs. 0.37 μg/kg/min)のバソプレシン開始を推奨した。
ルールの推奨するタイミングでバソプレシンが開始されていた場合、院内死亡はオッズ比0.81で減少すると考えられ、この知見は外部検証セットでも一貫して認められた。
評価
ノルアドレナリンへの反応が不良な敗血症性ショック患者では、より早期からバソプレシン投与を行う方が良い、という示唆がもたらされた。
カテコールアミン曝露の軽減を含め、バソプレシンの早期投与の利点はいくつか考えられるが、臨床への適用に先立って前向検証は欠かせない。