ARDS患者でのセボフルランによる吸入鎮静は有害か:SESAR試験
Inhaled Sedation in Acute Respiratory Distress Syndrome: The SESAR Randomized Clinical Trial

カテゴリー
救急医療、Top Journal
ジャーナル名
The Journal of the American Medical Association
年月
March 2025
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開始ページ
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背景

人工呼吸管理を受ける急性呼吸窮迫症候群(ARDS)では、プロポフォールやデクスメデトミジンによる浅鎮静が推奨されているが、吸入麻酔薬はオルタナティブとなりうるか?
フランスCHU Clermont-FerrandのJabaudonらは、同国37施設の集中治療室において中等度・重度のARDS成人患者を、最大7日間のセボフルランによる吸入鎮静、またはプロポフォールによる静注鎮静へと割り付け、28日以内の人工呼吸器不要日数および90日生存率を比較する第3相RCT、SESAR試験を実施した(n=687)。

結論

28日人工呼吸器不要日数(中央値)は、セボフルラン群で0.0日、プロポフォール群で0.0日であった(標準化ハザード比 0.76)。90日生存率はセボフルラン群で47.1%、プロポフォール群で55.7%であった(ハザード比 1.31)。
4種の二次アウトカムのうち、7日死亡率はセボフルラン群で高く(19.4% vs. 13.5%, 相対リスク 1.44)、28日ICU外日数が少なかった。

評価

全身麻酔で一般的に用いられる揮発性麻酔薬で、パイロット研究では酸素化の改善が示唆されていたものの、プロポフォールと比較した本研究では、セボフルラン群ではむしろ人工呼吸器不要日数が短く、生存率も低下する傾向がみられた。
ICUでの揮発性麻酔薬については、イソフルラン鎮静を検証するINSPiRE-ICU1試験、INSPiRE-ICU2試験(NCT05312385, NCT05327296)も進行中である。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(救急医療)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Critical Care Medicine (Crit Care Med)、The New England Journal of Medicine (NEJM)