日本のICU患者の5人に一人は80歳以上、そのICU死亡率は5.6%
Utilization and outcomes of life-supporting interventions in older ICU patients in Japan: a nationwide registry study
背景
日本は世界的にみて最も高齢化の進行した社会であるが、日本の集中治療室(ICU)における高齢患者の治療状況はどのようなものか?
日本Jichi Medical University(自治医科大学)のShiotsukaらは、日本ICU患者データベース(JIPAD)参加施設の集中治療室に入室した全成人患者(n=233,093)を対象として、年齢ごとの生命維持療法の実施状況・短期アウトカムを報告した。
結論
解析された患者の年齢中央値は71歳、80歳代が18.2%、90歳代が2.3%を占め、100歳代も67例あった。
高齢患者に対しても多くの生命維持療法(人工呼吸、持続的腎代替療法、静動脈体外膜酸素療法)が実施された。実施割合は18〜59歳の40.4%に対して、90〜99歳では27.6%と減少した。一方で、非侵襲的人工呼吸(NIV)の実施割合は上昇しており、人工呼吸とNIVのいずれかを受ける患者の割合は変化しなかった。
80歳以上の患者のICU死亡率は5.6%、院内死亡率は12.9%であり、80歳代の半数、90歳以上の60%は自宅退院がならなかった。
評価
現在では100施設以上が参加する国内大規模レジストリから、日本のICU患者の2割が80歳代以上であること、そのICU死亡率・院内死亡率が突出して高いとは言えないことなどを明らかにした。
高齢者への医療は、医療資源逼迫の文脈でとかく槍玉にあがりがちだが、実態に即した議論のためにこうしたデータは重要である。