動脈瘤破裂によるSAHの発生率は紫外線曝露と逆相関する
Association of Global Ultraviolet Radiation With the Incidence of Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage
背景
炎症は動脈瘤破裂の重要な因子だが、全身的な抗炎症反応を引き起こす可能性のある紫外線(UV)への曝露とくも膜下出血(SAH)の発生との関連は。
ドイツUniversity Hospital MannheimのMirbagheriらは、世界32ヵ国のデータに基づき、UV量とSAHの発生頻度との相関を検討した。国別のSAHの発生率は1.3〜28/10万人・年で、紫外線インデックス(UVI)は1.76〜11.27であった。
結論
全対象国でのSAH発生率とUVIは有意に逆相関した(相関係数[ρ]=0.48、p=0.012)。日本はSAH発生頻度が最高で13.7〜27.9/10万人・年、UVIは6.28であった。チリはUVIが最高で11.27、SAH発生頻度は3.8〜4.8/10万人・年であった。アイスランドはUVI 1.76と最低で、SAH発生頻度が9.8/10万人・年と高かった。欧州内では、UVIが高い地域(南東部ヨーロッパ)は、低い地域(北西部ヨーロッパ)と比較してSAH発生率が有意に低かった(ρ=0.68、p=0.004)。
全対象国でのUVIの低さは、高いSAH発生率を有意に予測した(オッズ比=5.13)。
評価
意外な相関を指摘した初めての研究である。著者らは、UV曝露が未破裂動脈瘤の壁における抗炎症作用を引き起こし、破裂を防止する可能性を指摘しており、またUV曝露はビタミンD合成を促進するため、ビタミンDの増加が動脈瘤の破裂を抑制している可能性があるとも示唆している。
国民の平均年齢、高血圧・糖尿病・高脂血症など、合併症の頻度、喫煙率等の交絡因子が調整されていないこと、高UVI国のSAH発生率の信頼性が不明瞭であることが研究の限界であり、興味深い仮説生成研究とみなされる。