T2D血糖降下薬治療導入の効果予測モデルを開発
A five-drug class model using routinely available clinical features to optimise prescribing in type 2 diabetes: a prediction model development and validation study
背景
2型糖尿病(T2D)の血糖降下療法において、作用機序の異なる複数の血糖降下薬が利用可能であるが、血糖降下応答の違いに関するデータはない。
イギリスUniversity of ExeterのDennisらは、Clinical Practice Research Datalink(CPRD)Aurumと3つのRCTのデータを使用し、5種類の血糖降下薬(DPP-4阻害薬・GLP-1受容体作動薬・SGLT2阻害薬・SU薬・チアゾリジンジオン)の投薬開始時点で血糖降下効果を予測するモデルを開発し、検証した。日常的に利用可能な9つの臨床属性(年齢・T2D罹病期間・性別・ベースラインHbA1c値・BMI・eGFR・HDL-C・総コレステロール・ALT)を予測因子とした。
最適治療は、12ヵ月後のHbA1c値が最も低い薬剤クラスと定義した。
結論
9つの臨床特徴のみに基づく5種の薬剤クラスモデルを開発した。CPRDコホート全体(開発コホートと検証コホート)では、212,166件の治療導入の15.2%がモデル予測の最適療法と評価された。モデル一致グループでは、一致したモデル不一致グループと比較して、観察された12ヵ月間のHbA1c値の平均ベネフィットは、CPRD地理的検証コホートで5.3 mmol/mol、CPRD時間検証コホートで5.0 mmol/molであった。
予測されたHbA1c値の差は観察されたHbA1c値の差とよく一致していた。CPRDにおけるモデル一致群はモデル不一致群よりも5年間の血糖障害リスクが低かった(aHR 0.62)。長期の非血糖アウトカムについては、モデル一致群とモデル不一致群では、全死亡率の5年リスクは同程度(0.95)であったが、MACE-HFアウトカム(0.85)・腎障害進行(0.71)・微小血管合併症(0.86)のリスクは低かった。
評価
T2D治療導入薬の選択には、病態的下位分類を利用する手法も提案されているが、単純な日常パラメータだけに基づく簡易手法を初めて提案した。すでに公開されており(https://pm-cardoso.shinyapps.io/t2dtst/)、世界中で低コストで実装可能である。なお、2019年以降でも、イングランドのT2Dの治療薬導入のうち、モデル予測の最適治療であったのは、わずか17.8%であった、という。