GLP-1作動薬による糖尿病治療は10種類のがんのリスク低下と関連
Glucagon-Like Peptide 1 Receptor Agonists and 13 Obesity-Associated Cancers in Patients With Type 2 Diabetes
背景
グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1RA)は、2型糖尿病(T2D)治療と減量に高い有効性を示し、ブロックバスターとなったが、糖尿病・肥満に関連するがんのリスクを低減する可能性も示唆されている。
アメリカCase Western Reserve University School of MedicineのWangらは、全米1億1,300万人の電子健康記録(EHR)データベースを基にした後向コホート研究を実施、肥満関連がんの診断既往がなく、GLP-1RA・インスリン・メトホルミンの処方を受けたT2D患者(n=1,651,452)における肥満関連がんの発症リスクを比較した。
検討された肥満関連がんは、食道がん、乳がん、大腸がん、子宮体がん、胆嚢がん、胃がん、腎がん、卵巣がん、膵がん、甲状腺がん、肝細胞がん、髄膜腫、多発性骨髄腫、の13種類であった。
結論
インスリンと比較して、GLP-1RAは10種類のがんのリスク低下と関連した。胆嚢がん(ハザード比 0.35)、髄膜腫(0.37)、膵がん(0.41)、肝細胞がん(0.47)、卵巣がん(0.52)、大腸がん(0.54)、多発性骨髄腫(0.59)、食道がん(0.60)、子宮体がん(0.74)、腎がん(0.76)。また、非有意ではあるが、胃がんもハザード比が1を下回った(0.73)。閉経後乳がんと甲状腺がんではリスク低下はみられなかった。
メトホルミンとの比較では、GLP-1RAにおけるリスク低下傾向がみられたがんとして、大腸がん(0.88)、胆嚢がん(0.37)があったが、いずれも有意ではなかった。対して、胃がんではGLP-1RAによるリスク上昇が認められた(1.54)。
評価
インスリンとの比較において、GLP-1RAを利用したT2D患者では様々ながんのリスク低下がみられた。
GLP-1RAで特定のがんのリスクが低下するとする研究は他にも多く現れており、高リスク患者での予防的使用も視野に入ってくる。