重症低Na血症の急速補正は死亡率低下と関連、浸透圧性脱髄症候群も増加せず:メタ解析
Correction Rates and Clinical Outcomes in Hospitalized Adults With Severe Hyponatremia: A Systematic Review and Meta-Analysis

カテゴリー
救急医療
ジャーナル名
JAMA Internal Medicine
年月
January 2025
185
開始ページ
38

背景

低ナトリウム血症を急速に補正すると浸透圧性脱髄症候群(ODS; 橋中心髄鞘崩壊症)が引き起こされる可能性があり、ガイドラインは重度の低ナトリウム血症における最初24時間の補正を制限することを推奨しているが、近年のエビデンスは、補正速度の遅さと死亡率上昇との関連を示唆している。
アメリカUniversity of California, IrvineのAyusらは、重度の低ナトリウム血症を呈する入院患者における急速補正(24時間あたり8-10 mEq/L以上)、緩徐補正(8-10 mEq/Lまたは6-10 mEq/L)、超緩徐補正(4-6 mEq/L未満)と死亡率との関連を評価する、システマティックレビュー・メタアナリシスを実施した。

結論

11,811名の患者を含む16件のコホート研究が解析の対象となった。
急速補正は、緩徐補正と比較して1,000人あたり32人少ない院内死亡(オッズ比 0.67)、超緩徐補正と比して221人少ない院内死亡(0.29)と関連した(中程度の確実性)。また、緩徐補正と比較して1,000人あたり61人少ない30日以内死亡(オッズ比 0.55)、超緩徐補正と比して134人少ない30日死亡(0.34)と関連した(低い確実性)。急速補正は入院日数の短縮とも関連した。
一方で、急速補正によるODSの有意なリスク増加は認められなかった。

評価

重度の低ナトリウム血症を急速に補正してもODSのリスクは増加せず、一方で死亡リスクは大きく低下し、入院期間は短縮された。
あくまで観察研究のメタ解析であり、ランダム化比較試験による検証は必須であるが、確認されれば実践を変えるエビデンスとなる。

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(制作協力:Silex 知の文献サービス

取り上げる主なジャーナル(救急医療)

The Journal of the American Medical Association(JAMA)、Lancet、Critical Care Medicine (Crit Care Med)、The New England Journal of Medicine (NEJM)