肺塞栓症の可能性が高い患者でもDダイマー検査による除外は可能か
Failure rate of D-dimer testing in patients with high clinical probability of pulmonary embolism: Ancillary analysis of three European studies
背景
肺塞栓症(PE)の臨床確率が低い、または中程度の患者では、D-dimer値による除外診断戦略が有効であるが、PEの可能性が高い集団では、陰性適中率が低下し、D-dimer検査に頼った場合の誤診リスクが増加するため、D-dimer検査は行わず胸部画像検査に進むことが推奨されている。
フランスPitie Salpetriere HospitalのBannelierらは、ヨーロッパで行われたクラスターランダム化非劣性試験2件(PROPER試験、MODIGLIANI試験)と後向研究1件(TRYSPEED研究)の事後解析から、PEの臨床確率が高い患者におけるD-dimer検査に基づく除外戦略の安全性を評価した。
結論
12,300の患者のうち、臨床的にPEの確率が高く、かつD-dimer検査を受けた651名が解析に含まれた。
PEの有病率は31.3%であった。D-dimer値が年齢調整閾値を下回った70名の患者のうち、再来院時または3ヵ月のフォローアップ期間中にPEを発症したものはなかった。除外失敗率は0.0%、95%信頼区間は0%-6.5%であった。ベイズ解析での95%信頼区間は0%-4.1%で、失敗率が2%未満となる事後確率は76.2%であった。
評価
事後解析であり、サンプルサイズも十分とはいえないものの、PE高リスク患者におけるD-dimer値を用いた除外戦略は、見逃しを起こさない可能性が高かった。
大規模なコホートで検証される価値がある戦略である。