救急外来は緩和ケアへの入り口となりうるか
Palliative Care Initiated in the Emergency Department: A Cluster Randomized Clinical Trial
背景
小規模な研究では、救急受診を緩和ケア導入の機会として用いることで患者のアウトカムを改善し、入院を削減できることが示唆されている。
アメリカMemorial Sloan Kettering Cancer CenterのGrudzenらは、全米29ヵ所の救急外来を受診した66歳以上で、短期死亡リスクが30%以上(Gagne併存疾患スコアが6超)の患者を対象に、救急外来から緩和ケアを開始するためのマルチコンポーネント介入の導入が、入院(一次アウトカム)・医療利用・死亡率に与える影響を評価する、ステップウェッジ方式のクラスターRCT、PRIM-ER試験を実施した。
マルチコンポーネント介入には、エビデンスベースの多職種教育、患者コミュニュケーションに関するシミュレーションベースのワークショップ、臨床意思決定支援、救急スタッフへの監査・フィードバックが含まれた。
結論
期間中に、98,922件の対象となる救急初診があった。患者の年齢は中央値77歳、50%が女性で、13%が黒人、78%が白人であり、Gagne併存疾患スコアは中央値8であった。
入院率は介入前期間で64.4%、介入後期間では61.3%と、有意な差はなかった(調整オッズ比 1.03)。
集中治療室への入室率(0.98)、救急再受診率(1.00)、ホスピスの利用率(1.04)、在宅医療の利用率(1.01)、入院率(1.01)、死亡率(1.07)などの二次アウトカムにも有意差は認められなかった。
評価
緩和ケアに関する救急スタッフのトレーニングは、患者の入院を減らさず、他のアウトカムにも影響を与えなかった。
この種の介入が有効な集団ではなかったのか、そもそも救急部門に成しうることが限られているのか、本研究だけで判断することは難しい。