新たな血栓性疾患、VITT様血栓性モノクローナル免疫グロブリン血症(MGTS)を特定
VITT-like Monoclonal Gammopathy of Thrombotic Significance
背景
ワクチン起因性免疫性血小板減少症/血栓症(VITT)は、血小板第4因子(platelet factor 4: PF4)標的化抗体と関連し、ヘパリン非依存性である。VITT抗体は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するアデノウイルスベクターワクチンまたはアデノウイルス感染によって引き起こされる急性の一過性血栓症に関与している。
カナダHamilton General HospitalのWarkentinらは、抗凝固剤不応性血栓症と間歇性血小板減少症を特徴とし、VIITに類するが、ワクチン・ウイルスによる急性血栓症とは異なる慢性血栓症の5名の患者(新規症例4名とインデックス患者)におけるVITT様抗体の同定を報告している。
結論
患者はすべてM蛋白レベルが低く(中央値0.14g/dL)、モノクローナルM蛋白がVITT様抗体であることが判明した。PF4上の抗体クロノタイププロファイルと結合エピトープは、ワクチン接種やウイルス感染後に発症する急性疾患で観察されたものとは異なっており、特異な免疫病理学的特徴を反映していた。このVITT様血栓性モノクローナル免疫グロブリン血症(MGTS)は慢性疾患であり、急性VIITとは異なる治療戦略が必要である。
評価
同グループが2022に発表した非ワクチン接種者におけるVIIT様疾患の第一例報告(https://haematologica.org/article/view/haematol.2021.280366)に続く症例シリーズ報告であり、VIIT様MGTSを疾患単位として確立した。既知VIITはモノクローナル疾患でなく、ワクチン・ウイルスに起因しない未知の疾患であるとみられ、原因不明の慢性プロトロンビン性病態における重要な鑑別診断項に加わった。さらに、自然治癒のない慢性疾患とみられるため、高用量IVIG、イブルチニブなどのブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬、さらには形質細胞標的化骨髄腫療法等の新戦略が考えられなければならない。