小児の急性単純性虫垂炎、保存的管理は1/3で失敗:APPY試験
Appendicectomy versus antibiotics for acute uncomplicated appendicitis in children: an open-label, international, multicentre, randomised, non-inferiority trial
背景
単純性急性虫垂炎の管理では、虫垂切除術に加えて抗菌薬投与による保存的管理の選択肢があり、近年のAPPAC試験やCODA試験などのRCTの結果を受けて、保存的管理の選択が増加している。しかし、これらの試験は成人を対象としたもので、小児の急性虫垂炎については大規模な臨床試験が不在であった。
アメリカChildren's MercyのSt Peterらは、北アメリカ・ヨーロッパ・東南アジアの5ヵ国で、臨床的に単純性(非穿孔性)虫垂炎が疑われる5〜16歳の小児患者を登録し、抗菌薬投与と虫垂切除術を割り付け、1年以内の治療失敗についての抗菌薬療法の非劣性を検証する非劣性RCT、APPY試験を実施した(n=936)。治療の失敗は、抗菌薬療法群では虫垂切除に至ること、虫垂切除群では切除された虫垂が病理学的に正常であることと定義された。
結論
治療失敗率は抗菌薬療法群で34%、虫垂切除群では7%であり、治療失敗率の差は26.7%で、20%の非劣性マージンを満たさなかった。
虫垂切除群の治療失敗28例は、1例を除いて虫垂炎陰性によるものであった。抗菌薬療法群で最終的に虫垂切除が必要となった153例のうち、13例(8%)は虫垂炎陰性であった。
重篤な有害事象、死亡は発生しなかった。抗菌薬療法群では軽度・中等度の有害事象リスクが高かった(相対リスク 4.3)。
評価
小児急性虫垂炎では初の大規模RCTであったが、保存的管理の非劣性は示されなかった。
ただ、同様に治療失敗率を一次アウトカムとしたAPPAC試験でも非劣性は示されなかったにもかかわらず、保存的治療は合理的なオプションとして受け入れられていった事情がある。この試験の結果もデータに基づく治療選択の立脚点として重要である。