オピオイド使用障害患者への共感はスティグマへの恐怖を軽減する
Emergency department staff compassion is associated with lower fear of enacted stigma among patients with opioid use disorder
背景
精神疾患や薬物使用障害の患者などは、差別や偏見に曝されることが多く、特に医療現場で偏見に曝されることの恐怖は、医療ケアの探索やアクセスを回避させたり、情報の隠蔽やケアへの非協力を生じさせる可能性がある。
アメリカCooper University Health CareのSteinhauserらは、同施設の救急外来を受診したオピオイド使用障害患者(n=116)を対象に、救急スタッフからの共感に関する患者の経験と、「実現されたスティグマ(enacted stigma)」への恐怖との関連を検討した。
共感の経験は5項目、5-20ポイントの共感指標により、実現されたスティグマは9項目、9-45ポイントのSubstance Abuse Self-Stigma Scaleによって評価された。
なお、実現されたスティグマは、認識されたスティグマ(偏見・差別に曝されている、曝されるだろうという主観的感覚)、あるいは内面化されたスティグマ(個人が社会的な偏見・差別を内面化した状態)と対になる言葉で、具体的に現れる偏見・差別・拒絶を指す。
結論
97%が何らかのスティグマを報告し、スコアの中央値は23であった。
多変量モデルにおいて、救急における共感の経験の多さは、実行されたスティグマに対する恐怖の低下と関連した。5項目共感指標が1ポイント上昇するごとに、実現されたスティグマへの恐怖は0.66ポイント低下した。
評価
救急スタッフが共感的であると感じるほど、スティグマに対する偏見・差別への恐れも小さくなった。
この研究が対象としたのは日本では一般的ではないオピオイド使用障害であるが、スティグマと結びつく疾患は多くあり、敷衍可能と思われる。