動脈瘤性くも膜下出血ではリベラル輸血の効果は認められず:SAHARA試験
Liberal or Restrictive Transfusion Strategy in Aneurysmal Subarachnoid Hemorrhage
背景
2024年、重症の急性脳損傷患者に対する輸血戦略に関する重要な臨床試験の結果が、相次いで発表された。外傷性脳損傷を対象としたHEMOTION試験は一次アウトカムの有意差を認めなかった一方で(https://doi.org/10.1056/NEJMoa2404360)、外傷性脳損傷・動脈瘤性くも膜下出血(aSAH)・脳内出血を対象としたTRAIN試験ではより高いトリガー値のベネフィットが報告されている(https://doi.org/10.1001/jama.2024.20424)。
カナダOttawa Hospital Research InstituteのEnglishらは、貧血を伴う急性aSAHを有する重症成人患者を、10 g/dL以下をトリガーとするリベラル輸血、または8 g/dLをトリガーとする制限輸血へと割り付け、12ヵ月時点での神経学的不良アウトカム(修正ランキンスケールが4点以上)を比較する第3相RCT、SAHARA試験を実施した(n=742)。
結論
神経学的不良アウトカムは、リベラル輸血群で33.5%、制限輸血群で37.7%であった(リスク比 0.88, 非有意)。
副次アウトカムである12ヵ月時点での機能的自立度、EQ-5D-5L効用値、VASスコアに群間差はなく、有害事象の発生も両群同等であった。
評価
aSAH患者に限定した本試験においては、リベラル輸血戦略によるアウトカム改善は認められなかった。
aSAHはTRAIN試験において登録患者の23%を占めており、両者を統合したメタアナリシスが望まれる。