心筋ミオシン阻害薬mavacamtenは、HCM患者の心室中隔縮小療法(SRT)の必要性を長期に軽減する:VALOR-HCM
Mavacamten in Patients With Hypertrophic Cardiomyopathy Referred for Septal Reduction: Week 128 Results from VALOR-HCM
背景
VALOR-HCMは、心筋ミオシン阻害薬mavacamtenが、閉塞性肥大型心筋症(HCM)患者における心室中隔縮小療法(septal reduction therapy: SRT)の必要性の軽減を56週で示した(https://jamanetwork.com/journals/jamacardiology/fullarticle/2809050)。
アメリカCleveland ClinicのDesaiらは、同試験の128週長期結果を報告している(対照:プラセボ)。一次エンドポイントは、128週目までにSRTに進んだ患者またはガイドライン適格性を維持している患者の割合であった。
結論
15.7%の患者が一次エンドポイントに達した。128週までに80.5%の患者がニNYHAクラス1以上、48.1%が2以上の改善を示した。安静時およびバルサルバ負荷によるLVOTの圧較差が、それぞれ38.2 mm Hgと59.4 mm Hgに持続的に低下した。88%の患者が市販のmavacamtenに切り替えた。13.8%(100患者年あたり5.41名)のLVEFが50%未満であった。このうち80%が治療を継続した。新たに心房細動を発症した患者は10.2%(100患者年あたり 4.55)であった。
評価
同薬のHCMに対する一般的有益性はEXPLORER-HCMが確定しており(https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31792-X/abstract)、VALOR-HCMはここでの報告により、より特異的なSRT回避効果を長期で確認した。同薬はすでに市販後のリアルワールド・長期データが蓄積されてきており、AHA 2024では、これまで最大規模の観察研究MARVEL-HCMの72週間リアルワールドデータが発表されている(https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/circ.150.suppl_1.4143175)。