敗血症疑い患者での抗菌薬投与期間はプロカルシトニン・ガイドで短縮可能:ADAPT-Sepsis試験
Biomarker-Guided Antibiotic Duration for Hospitalized Patients With Suspected Sepsis: The ADAPT-Sepsis Randomized Clinical Trial
背景
プロカルシトニン(PCT)などのバイオマーカーを、敗血症患者における抗菌薬投与の指標とする戦略は検討されて久しい。抗菌薬の中止の判断においては有用であることが示唆されているが、エビデンスの質は高いとは言えず、Surviving sepsis campaignガイドラインでも推奨されていない。
イギリスUniversity of ManchesterのDarkらは、イギリス国民保健サービス(NHS)の集中治療室41ヵ所に入室し、72時間以上の抗菌薬静注が予定されている敗血症疑い患者を、毎日のPCTガイドによる抗菌薬中止、C反応性タンパク(CRP)ガイドによる抗菌薬中止、標準治療の3群へと割り付け、抗菌薬の投与期間(有効性アウトカム)および28日死亡率(安全性アウトカム)を比較するRCT、ADAPT-Sepsisを実施した(n=2,761)。
結論
ランダム化後28日間の抗菌薬投与期間は、標準治療群で平均10.7日、PCT群で9.8日、CRP群で10.6日と、PCTガイドを用いた患者でのみ有意に短縮した。
28日以内の全原因死亡率は、標準治療群19.4%、PCT群20.9%と非劣性マージンを満たしたが、CRP群は21.1%で非劣性とは認められなかった。
評価
コロナ禍を挟んで足かけ6年にわたって行われた大規模試験で、PCTガイドにより死亡率を悪化させることなく、抗菌薬期間を短縮しうることを実証した。対して、CRPガイドのベネフィットは認められなかった。
PCTガイドのルーチン的使用を促すデータと言えそうだが、期間の短縮はわずかで、コスト効果の分析は必要である。