大腸がん検診で便中ピロリ菌抗原検査を行っても胃がん死亡は減らない
Screening for Helicobacter pylori to Prevent Gastric Cancer: A Pragmatic Randomized Clinical Trial
背景
胃がんの最大の原因であるピロリ菌の感染診断には複数の方法があるが、便中に含まれるピロリ菌抗原を測定する方法は、大腸がん検診としての便潜血検査と同時に実施することができるという利点がある。
台湾National Taiwan UniversityのLeeらは、大腸がん検診として隔年の便潜血検査を受ける資格を有する50〜69歳の住民を、便中ピロリ菌抗原検査+便潜血検査(HPSA+FIT)または便潜血検査のみ(FIT)へと割り付け、胃がん罹患率・死亡率への影響を評価する実用的RCTを実施した(n=240,000)。
結論
連絡不能、または案内を受けなかった個人を除いて、63,508名がHPSA+FITへ、88,995名がFITのみに案内され、それぞれ49.6%、35.7%が検診に参加した。
胃がん罹患率はHPSA+FIT群0.032%、FIT群0.037%、胃がん死亡率はHPSA+FIT群0.015%、FIT群0.013%と、いずれも差がなかった。いくつかの因子を調整した事後分析では、HPSA+FITと胃がん罹患率低下との関連が示されたものの(相対リスク 0.79)、胃がん死亡率との関連は認められなかった(1.02)。
評価
大腸がん検診と同時に行われたピロリ抗原検査は、胃がんの罹患・死亡に影響を与えなかった。
ただし、交絡を考慮した事後解析では胃がん罹患率低下との関連が示されており、より詳細な検証が必要とされる。