慢性硬膜下血腫に中硬膜動脈塞栓術?:STEM試験
Embolization of the Middle Meningeal Artery for Chronic Subdural Hematoma
背景
慢性硬膜下血腫(cSDH)の標準療法に、補助的中硬膜動脈塞栓術(MMAE)を追加することが提案されている。
アメリカCerebrovascular CenterのFiorellaら(STEM)は、症状のあるcSDH患者310名を、標準治療へのMMAE追加群(塞栓術群)と標準治療のみの群(対照群)に割り付けるRCTを行った。
一次有効性アウトカムは、180日時点でのcSDH再発または残存(>10 mm)、180日以内の再手術または緊急外科的救済処置、または180日以内の重症脳卒中・心筋梗塞・神経学因死亡、一次安全性アウトカムは、30日以内の重大な障害を伴う脳卒中または全死因死亡の複合である。
結論
塞栓術追加の一次有効性アウトカム優位を認めた(16% vs. 36%に発生した[オッズ比 0.36])。一次安全性アウトカムでは、塞栓術群の3%と対照群の3%が、30日以内に重度の障害を伴う脳卒中を発症するか死亡した。180日間で、塞栓術群の8%と対照群の5%が死亡し、神経学因死亡は、塞栓術群の1%と対照群の2%に発生した。
評価
急進中のテーマで、NEJMは3論文(STEM・EMBOLISE・MAGIC-MT)を併載している。EMOLISEがSTEMと同じく「有益」を示したのに対し、MAGIC-MTは「有意差なし」だったが、手法・評価法とも3研究には幅がある。現段階では、さらなる大規模RCTが必要、という結論となる。なお、STEM は、EVOHコポリマーを塞栓物質とする析出型液体塞栓材Squid(Balt USA)を使用したものだが、FDA治験用機器免除 (IDE)下でRCTが実施された。現在、MMAE に対して FDA 認可を受けている液体塞栓材はなく、材料自体が開発途上である。