混雑した救急外来の患者であるとはどのようなことか
Being a patient in a crowded emergency department: a qualitative service evaluation
背景
救急部門の混雑はすでに長年の問題であり、混雑がケアの品質と患者アウトカムを悪化させ、スタッフのバーンアウトを増加させることが知られている。しかし、混雑した救急を受診した患者の視点は、十分に記述されているとは言えない。
イギリスUniversity of LeicesterのCrastonらは、1日約900人が受診する同国の繁忙な救急外来で、混雑時(待合室や病床の占有率が高く、救急車や病棟への引き継ぎが長期化)に受診し、緊急の介入を要しなかった成人患者に対する半構造化インタビューを行い、解釈的現象学的分析(IPA)により、患者の経験と混雑緩和のための介入策を記述した。
結論
患者本人が7名、付き添いの家族が3名、インタビューに応じた。年齢は24歳から87歳で、待ち時間は最大で13時間、平均3時間20分であった。
インタビューでは、否定的な医療体験に関する話が大半を占め、以下の3つのテーマが抽出された。
「自律性の喪失」。参加者は、混雑は救急のプロセスの一部であり、状況を受け入れ待つしかないこと、スタッフは忙殺されており、助けを求めることもできないこと、情報の欠如が状況を複雑にしたことなどを報告した。また、待ち時間を表示するディスプレイや専門職ごとの制服の導入などが提案された。
「アンメットニーズ」。飲食物へのアクセスが悪いこと、テレビが導入されて我慢しやすい環境になったこと、案内板が全て英語で文字が小さいことなどが報告された。
「脆弱性」。他者−例えば、足を骨折した患者や高齢患者−への配慮から、いくつかの改善点が指摘された。
評価
患者・家族自身の声により、混雑した救急の経験が記述された。多くの参加者が仕方ないことと受け入れつつ、不確実性、無力感、不快感を感じていた。救急のシステム・プロセスの明確化を中心とした改善点も複数挙がっており、検討に値するだろう。