T2D・高血圧は胎内で始まる?
Exposure to sugar rationing in the first 1000 days of life protected against chronic disease
背景
イギリスは、第二次世界大戦中の食糧配給計画の一環で1942年に砂糖の配給制限を行い、その制限は1953年9月に終了した。
アメリカUniversity of Southern CaliforniaのGracnerらは、UK Biobankのデータを使用し、戦時中の砂糖配給制終了直前と終了直後にイギリスで生まれた60,183名の成人を対象に、受胎後1,000日以内の砂糖への曝露が長期的な健康状態にどのような影響を与えたかを特定した。
結論
配給制中は、砂糖の摂取量は現在の食事ガイドラインの範囲内(1日あたり50g)に制限されていた(40g)が、配給制終了直後には消費量がほぼ2倍(80g)になった。
受胎後1,000日間に砂糖の摂取制限があった場合、2型糖尿病(T2D)と高血圧発症のリスクが各約35%・20%減少し、発症が各4年・2年遅延した。子宮内曝露による保護は明らかで、特に固形食が始まったと予想される生後6ヵ月以降の砂糖の摂取制限により保護が強化された。胎児期の砂糖の暴露が制限されるだけで、リスク低減の約3分の1を占めた。
評価
長く認知されてきた関係(https://mccarrison.com/resources/sidebar/health-improvements-associated-with-war-time-rationing/falling-diabetes-rates-in-wwi-and-wwii/)を、UKBiobankデータを用いた大規模調査で確定に導いた画期的な研究である。著者らは、胎内での糖質供給が、子宮内の生理的リプログラミングを介して児の糖代謝に影響を与えるとし、ここでの結果が「T2Dの胎内起源仮説」を支持する、としている。著者らはまた、保護者を責めるべきではないとし、「現在の環境では、推奨ガイドラインの範囲内で食事をするのは非常に困難で、その困難は人生の非常に早い段階から始まる」とし、砂糖税導入や食品の配合・表示に関する規制強化なども示唆している。