心臓手術後AF予防のためのカリウム投与にエビデンスなし:TIGHT K
Potassium Supplementation and Prevention of Atrial Fibrillation After Cardiac Surgery: The TIGHT K Randomized Clinical Trial
背景
心臓手術後の心房細動(AFACS)予防のために、カリウム投与が広く行われているが、エビデンスは不十分である。
ドイツUniversitatsmedizin BerlinのO’Brienら(TIGHT K)は、ドイツ・英国23施設においてCABG手術予定でAF既往歴のない患者1,690名を、血清カリウム濃度正常下限値(3.6 mEq/L)を下回った時のカリウム投与と、正常上限値(4.5 mEq/L)を下回った時の投与に割り付ける非劣性RCTを行った。一次エンドポイントは、CABG手術後120時間以内または退院までのいずれかの心電図で確認された新規発症AFACSである。
結論
一次エンドポイントに群間差はなかった(正常上限値群26.2%、正常下限値群27.8%)。携帯型心拍リズムモニター等で検出されたAFACSの1回以上の発生率、AFACS以外の不整脈、入院患者の死亡率、入院期間にも群間差はなかった。カリウム使用患者1名あたりのコストは、正常下限値群が有意に低かった(平均差、$111.89)。
評価
カリウム投与回数中央値は正常下限値群で0回(0~5)、正常上限値群で7回(4~12)であった。この慣行はEUで米国より広がっている(2/3 vs. 1/3)が、エビデンス不在が確認された。ここでの試験はCABGに限っているが、他試験でも同等である可能性は高く、パラダイム変更を迫る結果である。