β-ラクタム系アレルギー歴のある救急患者でfull-doseの負荷試験は安全か
Full-dose challenge of moderate, severe, and unknown beta-lactam allergies in the emergency department
背景
β-ラクタム系抗菌薬でのアレルギーは抗菌薬関連アレルギーの大半を占め、特にペニシリン系アレルギーは記録される頻度も高いものの、ペニシリンアレルギーを自己申告した患者の多くは、実際にはアレルギーでないという研究がある。このため、近年では皮膚プリックテストで安全な患者を識別する戦略が提案されているが、判定までに1時間ほどを要し、救急部門での利用に適さないという問題があった。
アメリカGrand River Emergency Medical GroupのAndersonらは、電子カルテ(EHR)で中等度以上または重度不明なβ-ラクタムアレルギーの記録があり、救急外来において規定用量でのβ-ラクタム系抗菌薬の負荷試験を行った成人患者(n=184)を対象に、負荷試験のアウトカムを評価する単施設後向記述研究を行った。
結論
2.7%にあたる5名で負荷試験後にアレルギー反応が引き起こされた。うち1名は救急外来で、4名は入院期間中に発生した。アナフィラキシー反応はなく、いずれも軽度の発疹、掻痒であった。
負荷試験の98.9%はセファロスポリンによって行われた。86.4%ではβ-ラクタム系抗菌薬が継続使用され、73.4%では今後の使用のため、アレルギープロファイルが更新された。
評価
近年、β-ラクタム系の交差反応のメカニズムについて解明が進み、ペニシリンアレルギーに対するセファロスポリン系の投与が可能と考えられるようになってきた。
本研究のデータは、full-doseのセファロスポリンによるチャレンジの安全性を強く示唆し、抗菌薬使用の適正化を促す。