サハラ以南アフリカの就学前児にアジスロマイシンを集団使用:AVENIR試験
Azithromycin to Reduce Mortality-An Adaptive Cluster-Randomized Trial
背景
サハラ以南アフリカにおける小児死亡率低減のための就学前児アジスロマイシン集団使用プログラム(MORDOR)の有効性が示された(https://www.medicalonline.jp/review/detail?id=2692)が、WHOは抗菌薬耐性(AMR)予防の観点から、生後1~11ヵ月の乳児に制限するよう勧告している。
アメリカUniversity of CaliforniaのLietmanら(AVENIR)は、ニジェールの村落の生後1~59ヵ月の小児(1,273村落)と生後1~11ヵ月の乳児(773村落)にアジスロマイシン年2回・全4回経口投与するプログラムの有益性を検証する適応型クラスターRCTを行った(対照:プラセボ)。一次アウトカムは、村落レベル死亡率(1,000人年あたりの死亡数)である。
結論
419,440人年のデータを収集した。研究期間中、参加者総数382,586名中5,503名が死亡した。アジスロマイシン群の死亡率は、小児ではプラセボ群に比して有意に低減した(14%)が、乳児では低下は有意でなかった。
重篤有害事象は、プラセボ群で3件、乳児・小児アジスロマイシン群でそれぞれ1件報告され、いずれも治療関連ではなかった。
評価
多様な病原体疫学をもつアフリカの広汎な地域の小児に一括して抗菌薬を使用する、というプログラムである。当然最大のリスクは、小児腸におけるレジストーム(gut resistome)の形成であり、それを実証したデータもある(https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa2002606)。アフリカ地域でのトラコームの蔓延の抑制、という一義的ベネフィットとのバランスが議論されることになる。