敗血症患者は敗血症のように見える:医師のゲシュタルトはスクリーニングツールよりも優秀
Early Physician Gestalt Versus Usual Screening Tools for the Prediction of Sepsis in Critically Ill Emergency Patients
背景
「全体は部分の総和ではない」という考えはアリストテレスにまで遡るが、臨床医学においても、個別の徴候・変数の総和に還元されない全体的な臨床像、すなわち「臨床ゲシュタルト(clinical gestalt)」を認識するスキルが重要と考えられている。
アメリカHennepin HealthcareのKnackらは、都市部大学病院において救急の重症患者(外傷患者や診断の明らかな患者は除外)を対象に、医師のゲシュタルトと既存の敗血症スクリーニングツールを比較する前向観察研究を実施した。
医師のゲシュタルトは、受診後15分・60分の時点で、当該患者が敗血症である可能性を0から100のビジュアルアナログスケール(VAS)で評価することで求められ、スクリーニングツールとしてはSIRS、SOFA、qSOFA、MEWSに加え、LASSOによる変数選択を用いた機械学習ロジスティック回帰モデルも比較対象とした。
結論
59名の医師による2,484回の診療が解析の対象となった。このうち275例(11%)が敗血症の退院時診断を受けた。
医師による初回(15分時点)でのVASは、受信者動作特性曲線下面積(AUC)が0.90と、LASSO(0.84)以下、qSOFA(0.67)、SIRS(0.67)、SOFA(0.67)、MEWS(0.66)を上回った。
60分時点のデータまで拡張しても、結果は同様であった。
評価
臨床医のゲシュタルトは、臨床変数をもとに算出するスクリーニングツールよりも正確に、敗血症患者を特定することができた。
経験を積んだ医師の直感の正確さを示す研究であるが、敗血症の早期では信頼性の高い臨床意思決定ツールが存在しない、という意味もある。