電動自転車・電動キックボードによるケガは急増中:アメリカ調査
Injuries With Electric vs Conventional Scooters and Bicycles
背景
日本でも法的な位置づけが確定し、都市部を中心に見かけるようになった電動キックボード(eスクーター、立ち乗りスクーターとも)であるが、その安全性には懸念が根強い。
アメリカUniversity of CaliforniaのFernandezらは、同国の救急部門から市販品に関連した傷害データを収集し、全米での推定値を提供する包括的データベース、National Electronic Injury Surveillance Systemに照会を行い、2017〜2022年に発生したマイクロモビリティ(自転車・スクーター・電動自転車・電動キックボード)関連傷害の傾向を調査した。
結論
期間中、自転車2,499,843件、スクーター304,783件、電動自転車45,586件、電動キックボード189,517件の傷害が記録された。受傷年齢は中央値28歳、72%が男性で、アジア系1.5%、黒人13%、ヒスパニック12%、白人49%であった。
期間中、電動自転車での受傷者数は年751名から23,493名に、電動キックボードの受傷者数は8566名から56,847名に増加した。
従来のモビリティ(自転車・スクーター)と比較して、電動モビリティ(電動自転車・電動キックボード)での受傷は、より高齢で(中央値31歳 vs. 27歳)、黒人の割合が高かった(25% vs. 12%)。
電動モビリティでの受傷ではヘルメットの着用率が低く(43% vs. 52%)、都市部での事故が多かった(83% vs. 71%)。また、飲酒事の事故の割合も電動自転車で従来自転車より(7% vs. 4%)、電動キックボードで従来スクーターより(9% vs. 3%)高かった。
評価
電動自転車や電動キックボードによる傷害データは、近年、先進国から報告が相次いでいる。このアメリカのデータも、電動モビリティによる傷害・入院が大きく増加傾向にあることを明らかにした。
電動モビリティによる傷害では、ヘルメット非着用や飲酒運転などの危険行動の割合が高く、交通インフラの改善だけでなく、安全意識の啓発が必要である。