健診心電図は心血管疾患リスクを予測する
Routine Electrocardiogram Screening and Cardiovascular Disease Events in Adults
背景
日本では健康診断での心電図検査が広く行われているが、一般集団における心電図所見が心血管疾患(CVD)の発症リスクと関連するかは十分明らかにされていない。
アメリカBrigham and Women's HospitalのYagiらは、日本の現役世代の40%をカバーする全国健康保険協会データベースに登録された35-65歳の個人(n=3,698,429)を対象に、ベースラインの心電図所見(正常から重度の異常まで)と全死亡・CVD(心筋梗塞・脳卒中・心不全)入院の関連を調査した。
結論
登録者の平均年齢は47.1歳、男性は66.6%であった。ベースラインの心電図検査では、16.8%に1つの軽度異常、3.9%に2つ以上の軽度異常、1.5%に重度異常が認められた。
フォローアップ期間5.5年(中央値)で、一次複合エンドポイント(全死亡・CVD入院)は心電図正常の個人で1万人年あたり92.7件発生したのに対し、軽度異常が1つの個人では128.5件(ハザード比 1.19)、軽度異常が2つ以上の個人では159.7件(1.37)、重度異常の個人では266.3件(1.96)発生した。
また、軽度異常の有無・個数は、心電図での新たな重度異常の発生増と関連しており、心電図正常の個人で1万人年あたり85.1件発生したのに対し、軽度異常が1つの個人では217.2件(2.52)、軽度異常が2つ以上の個人では306.4件(3.61)発生した。
評価
日本では広く実施されている無症状・非リスク個人での健診心電図であるが、諸外国のガイドラインでは推奨されていないことが多く、その是非が議論されてきた。
本研究は、健診心電図での異常所見がCVDリスクを予測しうることを明らかにしたが、その意義は、効果的なフォローアップ戦略があり得るかにかかっている。