トロポニン上昇のない救急胸痛患者では非侵襲的心臓検査の利益はない
Emergency Department Referral of Patients With Chest Pain for Noninvasive Cardiac Testing and 2-Year Clinical Outcomes
背景
2021年以前のガイドラインは、急性冠症候群(ACS)が疑われる救急外来の胸痛患者に対して非侵襲的心臓検査(NICT)を推奨していたが、NICTによるアウトカムの改善は推定ACSリスクの高い患者に限られるというエビデンスを受けて、新しいガイドラインでは低リスク患者でのNICTは推奨されなくなった。
アメリカKaiser Permanente Medical CenterのMarkらは、カリフォルニア州北部の総合医療システムに属する救急外来を胸痛により受診した患者のうち、心電図検査でのST上昇または血清トロポニン検査による心筋傷害のない患者(n=144,577)を対象に、NICT紹介率とその後2年間の主要有害心イベント(MACE)との関連を検証する後向コホート研究を実施した。
交絡を考慮するため、最初に担当した救急医のNICT紹介率によって、患者を低NICT群・中NICT群・高NICT群にグループ分けした。
結論
30日以内のNICT紹介率は、低NICT群で13.0%、中NICT群で19.9%、高NICT群で27.8%であった。
低NICT群と比較したMACEのハザード比は、中NICT群で1.08、高NICT群で1.05と有意な減少は認められなかった。サブグループ解析でも結果は同様であった。
評価
ST上昇もトロポニン上昇も認められない患者では、画像検査も含めたNICTへの紹介が多くても2年MACEリスクの低下はみられなかった。
これらの患者でルーチンにNICTを行うべきではない。