世界の脳卒中死亡の1%は猛暑と厳寒に原因か
Extreme Temperatures and Stroke Mortality: Evidence From a Multi-Country Analysis
背景
グローバルな気候変動に伴う健康への被害は今世紀の重要な公衆衛生問題であり、異常気象と脳卒中の関連についても、主に都市・国レベルで多くの研究が行われているが結果はまちまちである。
アメリカHarvard T.H. Chan School of Public HealthのAlahmadらは、気象と健康の関連に関する国際コンソーシアムMulti-Country Multi-City Networkから、虚血性脳卒中・出血性脳卒中のデータベースを構築し、極端な温度(各都市の気温分布でそれぞれ2.5%の酷暑・厳寒)と脳卒中の関連についてのケース・クロスオーバー研究を実施した。
結論
世界25ヵ国522都市から、1970年から2019年にかけての虚血性脳卒中死亡3,443,969件と出血性脳卒中死亡2,454,267件のデータが収集された。
虚血性脳卒中1,000件あたり、極寒日は9.1件、酷暑日は2.2件の過剰死亡をもたらし、出血性脳卒中では1,000件あたり、極寒日は11.2件、酷暑日は0.7件の過剰死亡をもたらした。
特に国内総生産(GDP)が低い国では、高GDP国よりも酷暑に関連した出血性脳卒中の死亡リスクが高かった。
評価
異常気象、特に厳寒は1%程度の脳卒中による過剰死亡と関連していた。室内温度管理システムが普及しておらず、医療の質が低い低所得国では不均衡に影響が大きいとみられ、気候正義(climate justice)の問題として認識される必要がある。