小児期の脂質管理で将来のCVDを予防する
Non-High-Density Lipoprotein Cholesterol Levels From Childhood to Adulthood and Cardiovascular Disease Events
背景
non-HDL-C(非高比重リポ蛋白コレステロール)の上昇は小児によくみられ、成人の心血管疾患(CVD)リスクを高めるが、成人までに低減すればリスクは低下するか。
オーストラリアBaker Heart and Diabetes InstituteのMagnussenらは、1970〜1996年にi3Cコンソーシアム(米国・フィンランドで行われた7件の前向コホート研究)に参加した小児5,121名(ベースライン時の平均年齢10.7歳, 平均追跡期間:40歳以降8.9年)のデータを分析した。
一次アウトカムは、医療記録によって判定された致命的・非致命的CVDイベントの発生である。
結論
CVDイベントが147件発生し、その105件は致命的でなかった。小児期から成人期にかけて、コホートの18%は脂質異常症が解消し、5%は脂質異常症が持続し、3%は脂質異常症が新たに発生し、74% はnon-HDL-C値が持続的にガイドライン推奨範囲内であった。小児期および成人期non-HDL-C値はいずれもCVDイベントのリスク増加と関連していた(zスコア1単位増加当たりのハザード比[HR]: 各1.42および1.50)が、成人期non-HDL-C値による調整後には、小児期non-HDL-C値の関連性は減弱した(HR 1.12)。補完的分析により、小児期non-HDL-C値と小児期から成人期の間の値の変化は、成人期のCVDイベントのリスクと独立して関連していることが示された。
小児期および成人期を通じてnon-HDL-C値がガイドライン推奨範囲内であった参加者と比較して、小児期から成人期にかけてnon-HDL-C高値の脂質異常症を発症した参加者および脂質異常症が持続した参加者は、CVDイベントのリスクが高かった(HR 各2.17および5.17)。小児期から成人期を通じてnon-HDL-C高値の脂質異常症であった参加者は、そのリスクがさらに倍増した(HR 5.17)。しかし、小児期にnon-HDL-C高値の脂質異常症で成人期にはガイドライン推奨範囲内であった参加者は、小児期および成人期に脂質異常症の病歴がない参加者と比較してCVDイベントのリスクは有意に増加しなかった(HR 1.13)。
評価
アテローム性動脈硬化症が早期に発生する事は周知であり、脂質異常症児の成人後CVDリスクもよく知られているが、世界的な介入的大規模コホート研究により、成人期までにnon-HDL-C高値を解消できた子供は、CVDリスクを対照者と同レベルまで下げられることを示した。アメリカ小児科学会等は2011年以来、全米の9〜11歳児童の脂質検査を推奨してきたが、実現していない。