米国黒人におけるTTR遺伝子V142Iバリアント保有の心血管リスクを統合解析
Cardiovascular Burden of the V142I Transthyretin Variant
背景
トランスサイレチン(TTR)遺伝子のアミロイド形成性V142Iバリアントの心筋症(CM)・心不全(HF)・死亡リスクは周知であり、特にアメリカでは黒人の3~4%が保有している、とされる。
アメリカBrigham and Women’s HospitalのSolomonらは、中年~老年期の同バリアントキャリアにおける疾患自然史の解明と心血管疾患負担の評価のため、4件のコホート研究(ARIC・MESA・REGARDS・Women's Health Initiative, 平均追跡期間15.5年)に参加しHFに罹患していないと自己申告した黒人23,338名のデータを統合分析した。V142I遺伝子バリアント保有者は参加者の3.23%、一次アウトカムはHF入院・全原因死亡である。
結論
同バリアントキャリアの10年HF入院リスクは63歳までに増加し、これは主にHFrEFによるものであった。他方、10年全死亡リスクは72歳までに増加した。年齢のみがリスク関連因子であり、性別や他の変数との関連はなかった。推定寿命の短縮は50歳で1.9年、81歳で2.8年であった。総体として、50歳から95歳までの推定435,851名の米国黒人が、バリアント保有により累計957,505生存年を失う。
評価
米国黒人V142IキャリアのHF・死亡リスクに関する集成的結論で、明確な年齢依存性と性別不関性も確定し、以降の臨床・研究の基本参照点となった。著者らは、V142Iバリアント保有者が心臓アミロイドーシスを発症する機構を検討することが次の課題である、としている。