GLP-1RA使用は術後呼吸器合併症リスクと関連するのか
Preoperative GLP-1 Receptor Agonist Use and Risk of Postoperative Respiratory Complications
背景
現在米国麻酔学会は、グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1RA)の術前投与を差し控えることを推奨しているが、根拠は堅固でない。
アメリカStanford UniversityのDixitらは、緊急手術を受けたDM患者およびGLP-1RAの処方歴のある患者の術後呼吸器合併症のリスクを評価するため、保険請求データベースを分析した。
結論
全コホート患者中の3,502名(平均年齢53.6歳、男性50.9%)が、手術前にGLP-1RAの処方を受けていた。GLP-1RA使用患者では、肥満がより一般的であった(51.9% vs. 41.6%)。術後の呼吸器合併症の発生率に、使用・不使用群間の有意差はなかった。この結果は、人口統計特性・DM重症度・併存疾患等の調整後でも同様だった。
評価
GLP-1RAの汎用に伴い服用中の手術患者が増え、胃内容滞留による呼吸器合併症が報告されたためにとられた緊急措置的ガイドラインである。根拠はなかったようで、撤廃されるとみられる。不適切ということでRCTは行われなかった。著者らは、ここでの結論は、「麻酔科医その他の高度な気道確保医のいない状況下で、軽〜中程度の鎮静下で処置を受けるGLP-1RA使用患者には当てはまらない」と強調している。