既存リスクファクターへの新規心血管バイオマーカー追加の価値は
Prognostic Value of Cardiovascular Biomarkers in the Population
背景
アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)に関する既存リスクファクターへの新しい心血管バイオマーカーの追加により、リスク予測能はどの程度改善できるか。
ドイツUniversity Heart and Vascular Center HamburgのNeumannらは、12ヵ国の28一般集団ベース2コホートのデータ(n=164,054)を用いて、この問題を検討した(追跡期間中央値11.8年)。一次アウトカムはASCVDの発症、二次アウトカムは全死亡・心不全・虚血性脳卒中・心筋梗塞である。
結論
17,211件のASCVD事象を同定した。検討されたすべてのバイオマーカー(高感度心筋トロポニンI[hs-cTnI]-T[cTnT]・B型ナトリウム利尿ペプチド[BNP]・N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド[NT-proBNP]・hsCRP)とASCVD発症との有意な関連性がみられた(1SD変化あたりのHR:各1.13・1.18・1.21・1.14・1.14)。
65歳未満の患者では、既存危険因子モデルへのhs-cTnI・NT-proBNP・hsCRPの組み合わせの追加により、10年間ASCVD発症(一次アウトカム)のC統計量が0.812から0.8194に改善した。リスク予測において最も顕著な改善がみられたのは、心不全と全死亡(二次アウトカム)であった。
評価
新心血管バイオマーカーの価値に関する研究は多いが、この研究は、多国籍・大規模・長期という点で最良のものの一つである。結論は、「一定の価値があるが、総体的なリスク予測能の改善は限定的である」ということになる。著者らは、心不全と死亡に関してはより有利であると強調しており、従前の見解通り、ASCVD一般より心不全・死亡の予測価値が高い。


