軽症脳卒中でのtenecteplase治療は有害か:TEMPO-2試験
Tenecteplase versus standard of care for minor ischaemic stroke with proven occlusion (TEMPO-2): a randomised, open label, phase 3 superiority trial
背景
急性脳梗塞に対しては静脈内血栓溶解療法が標準治療となっているが、軽症脳梗塞に対する血栓溶解のエビデンスは不十分である。
カナダUniversity of CalgaryのCouttsら(TEMPO-2)は、10ヵ国48施設の、NIHSSスコアが0-5、頭蓋内閉塞または局所灌流障害が認められ、発症12時間以内の軽症急性虚血性脳卒中患を、tenecteplase(0.25 mg/kg)または血栓溶解療法以外の標準治療へと割り付け、ベースラインへの機能的回復を比較する国際RCTを実施した。
結論
試験は無益中止となった。
mRSに基づく90日時点でのベースラインへの回復は、対照群の75%、tenecteplase群の72%で発生した(リスク比 0.96)。Tenecteplase群では、5%にあたる20名が頭蓋内出血で死亡し、対照群の5名(1%)よりも有意に多かった(aHR 3.8)。また、症候性頭蓋内出血はtenecteplase群の2%、対照群の1%未満で発生した(リスク比 4.2)。
評価
有益性は認められず、また頭蓋内出血リスクも増加しており、予定の7割ほどの患者登録で中途終了となった。
アルテプラーゼとアスピリンに差がないことを示唆したPRISMS(http://doi.org/10.1001/jama.2018.8496)、2剤併用抗血小板療法がアルテプラーゼに非劣性であることを示したARAMIS(https://doi.org/10.1001/jama.2023.7827)に続くエビデンスとなるが、軽症脳梗塞は、おそらく血栓溶解療法には"too good to treat"な集団であり、ルーチンなtenecteplase投与は推奨されない。