なぜ女性への心肺蘇生を躊躇するのか?
Examining the Impact of Layperson Rescuer Gender on the Receipt of Bystander CPR for Women in Cardiac Arrest
背景
いくつかの研究において、女性の院外心停止患者は居合わせた市民救助者による心肺蘇生(バイスタンダーCPR)を受けにくいことが示唆されている(https://doi.org/10.1016/j.mayocp.2018.12.028, https://doi.org/10.1161/JAHA.118.010324, https://doi.org/10.1093/eurheartj/ehz297)。もし、こうしたデータが実態を反映しているとすれば、その背景にはどのような原因があるのか?
アメリカChildren's Hospital of Orange CountyのSheltonらは、クラウドソーシング・プラットフォーム上で募集された、CPRの意味を正しく理解しているアメリカ居住の参加者(n=520)に対する質問調査によって、患者の性別がCPRの障壁となり得るかを検討した。
結論
回答者の42.3%が女性、人種的には74.2%が白人、10.4%が黒人、6.7%がヒスパニックであった。48.1%がCPRの方法を知っていたが、CPRの経験があったのは7.9%であった。
救助者が男性であるシナリオについて、多くの参加者が「救助者は性的暴行・セクハラにより訴えられることを恐れている」(回答の36.2%)、「救助者は女性に触れること、ないし触ることが不適切でありうることを恐れている」(34.0%)を上位に挙げた。
救助者が女性であるシナリオでは、「救助者は女性を傷つけたり、傷つけたりすることを恐れている」が最上位のテーマであった(41.2%)。
評価
こうした恐れが実際に存在し、女性へのCPRを妨げているのかは定かでないものの、男性の救助者はセクハラや不適切な接触への恐れから女性へのCPRを躊躇しているのではないか、という信念は広く存在しており、CPR教育・啓蒙でこの問題をどのようにクリアするのかは大きな社会的課題である。